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Hey8朗
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黄昏の豚
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 3年前、彼女と出会った夏。 (と、タバコ切らしちまった) 時計に目をやると時刻は23時を丁度回った頃。 自販機は既にダンマリしている時間。 (しょーがない、コンビニ行くか) ラフな格好のまま、ポケットに小銭を詰めて錆付いたドアを開く。 つま先を二度トントンと打ち鳴らした後、溜息を一つ。 昼夜を問わぬ真夏のうだる様な暑さ。 この暑さはいつまで続くのだろう。 歩きながら、ふとそんな些細な事を考えていた。 答えを導き出す前に、たどり着いたコンビニ。 今日も店内はガラリとしたものであった。 火照った身体を冷房が包み、思わず身震いを一つ。 『彼女』はカウンターの中で一人、つまらなそうにしていた。 そんな『彼女』を尻目に雑誌、飲み物 おやつを無意味に見て周り、何も持たずにレジへと向かう。 「セブンスター、2つ」 「ボックスですか?ソフトですか?」 どこか上の空の彼女は問う。 「ボックスで」 これが、この物語の始まり。 それからも、深夜にうっかり煙草を切らしてしまう事は多々あった。 その度に俺はポケットに小銭を詰め、靴のつま先を打ち鳴らす。 季節は巡り、冬。 純白に染まる道を真っ先に汚しながら、俺はコンビニへ向かう。 ゆっくりと開く自動ドア。 暖かな暖房が身体を包む。 カウンターの中では相変わらずつまらなそうな彼女。 「すいません」 そう、声をかけた時。 「600円になります」 彼女は2つのセブンスターを差し出した。 「……あ、あぁ」 冷たい雪空の下、少しだけ温かな心。 慣れた手付きでクルクルとテープを剥がし、かぷりと銜えるセブンスター。 「ご丁寧に、ボックスなんだな」 ささやかな気遣いとセブンスターの煙は、寝ぼけ眼に良く染みた。 それからと言うものは俺が店に入るなり、彼女は何も言わずにセブンスターを2つ差し出してくれた。 だから俺も600円を手の中に忍ばせて行った。 まるでその速さを競うかのように、俺達はお金と煙草を差し出し合った。 それから二年の月日が流れた。 相変わらず俺達は競う様に小銭と煙草を出し合う日々を送る。 そんなある日。 コンビニの隣に24時間営業の大型スーパーが建った。 深夜帯でも安価で商品を購入出来るスーパーは、夜型の俺にとっても好都合である。 煙草を買いに行くついでに、よく飲み物や焼き鳥買ったものだった。 時刻は深夜0時を回った頃。 俺は小銭をポケットに詰め、靴のつま先を打ち鳴らす。 歩いて5分程の距離に位置していたコンビニ。 24時間営業のスーパーのせいで、すっかり衰退していたコンビニ。 店の自動ドアには閉店を告げる張り紙が貼られていた。 意外だったか、と問われると誰もが『そうでもない』と答えるだろう。 スーパーとコンビニではあまりにも分が悪すぎる。 カウンターの中でつまらなさそうにしている彼女は 俺に気付くと慌てて煙草を2つ差し出した。 「閉めちゃうんだ」 「600円になります」 俺は握り締めたままだった小銭を差し出しながら言葉を続ける。 「これからは不便になるなぁ」 「袋はご利用になられますか?」 「……いや、そのままで」 それは、素っ気無い対応だった。 別れを惜しむ言葉が見付からず俺は口篭ってしまう。 「まぁ、なんだ、頑張れよ」 「ありがとうございました」 時刻は深夜0時を回った頃。 俺は小銭をポケットに詰め、靴のつま先を打ち鳴らす。 通いなれたコンビニ。 あんなに光を取り入れていた窓も、新聞紙で適当にふさがれていた。 一瞬緩めたペダルを踏み込む足。 今日は少し遠いコンビニを目指した。 それから、2ヶ月がたった。 俺は野暮用で隣街まで足を伸ばしていた。 何を見る訳でもなく立ち寄った本屋、ゲーセン。 線香のように火をつけては消した煙草。 (……ち、切らしちまったか) クシュクシュと無気力な音を立てて小さくなる空き箱。 溜息混じりに仕方なくコンビニに立ち寄る。 雑誌、飲み物、おやつコーナーを無意味に見て周り 何も持たずにレジへと向かう。 「セブンスター」 小銭入れを覗き込み、再度溜息を一つ。 ゲーセンで浪費したせいで小銭入れは殺風景なものだった。 「1万円からで宜しいですか?」 「えぇ」 すっかり軽くなった小銭入れを見詰めながら返した。 はぁ、何やってんだろうなぁ、自身を失笑していた時。 「いつもは」 突然の声に顔を上げる。 そこには、良く知った顔があった。 「600円ぴったり出すのにね」 カウンターの中で、彼女は優しく微笑みかけていた。